「不登校・社会的ひきこもりにかかわる心理臨床から」高垣忠一郎
不登校や社会的ひきこもりの当人が自分で自分を「直して」いく主体になろうとするときに,もっとも障害になるのが「自己否定の心」である。多くの当事者の子どもや若者が,学校に行けない自分,社会に出られない自分を「ダメな奴」と責め,貶し,否定している。そのうえ親や教師の期待や「働かざるもの食うべからず」といった社会的規範に応えられない自分に「負い目」や「罪悪感」を感じている。そのような自己否定にとらわれると「ダメな自分」をますます人前に出せなくなり,一層社会からひきこもることになる。「出て行かねばならない」と思いながら出ていけない葛藤の泥沼にはまり込んで身動きつかぬ自分を「どうしようもなくダメな奴」とさらに否定するという,自己否定の悪循環に陥っていくことになる。そうすると,そういう自分をこの世から消したくもなってくる。 このような自己否定スパイラルに陥らないように注意を払い,援助の要諦を見失わないように彼ら自身の内面の状態に目を据えようとする概念が筆者の「自分が自分であって大丈夫」と いう自己肯定感である。彼らの内面に「自分が自分であって大丈夫」という「安心基地」が築かれるように援助することを抜きにした取り組みは上滑りし,一層彼らを焦りや自己否定の心に追い込んでしまう危険性を秘めているのである。 今日の日本の子どもや若者が自分の能力・特性を他人と比較して「とてもよい」と評価できず,あるいは自分なりの基準で「これでよい」と評価できず,自分に対して誇りや自信をもてないという自己評価の低さがしばしば問題にされる。しかしより深刻な問題は不登校の子どもや社会的ひきこもりの若者たちの陥る苦境に端的に示されるように,それが「自分など存在する値打ちもない」「自分などいない方がいい」と、「自己肯定感」(高垣忠一郎)」という自己存在の否定にまで及んでいってしまうことである。
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