春のうた
草野心平
かえるは冬のあいだは土の中にいて春になると地上に出てきます。
そのはじめての日のうた。
ほっ まぶしいな。
ほっ うれしいな。
みずは つるつる。
かぜは そよそよ。
ケルルン クック。
ああいいにおいだ。
ケルルン クック。
ほっ いぬのふぐりがさいている。
ほっ おおきなくもがうごいてくる。
ケルルン クック。
ケルルン クック。
小学校4年生の国語の教科書(光村出版)に、この詩が出てきます。
私は、リズム感のあるこの詩が好きでした。
いつものように、楽しく音読し、書いてもらった感想をみんなで読んでいた時のことです。
「おおきなくも」のところでの一人の子どもの感想に、私は、立ち止まりました。
その子(女子)は、「大きな蜘蛛」と解釈していたのです。
私は、びっくりしました。
(なるほど、そんな解釈も成り立つ!)と、心が震えたことを今でも覚えています。
私は、これ以前にも4年生を担任したことがあり、その時は、私の解釈(「大きな雲」)で授業をしていました。その時の子ども達もあまり違和感なく「大きな雲」と解釈して、授業を受けていたように思います。ですから、この時のその子の解釈には驚きました。
読み返してみると、確かに冬眠から目覚めたかえるの視点からすると、「大きな蜘蛛」でも、何ら不思議ではありません。その時の子ども達も、多くが「大きな雲」と解釈していたようですが、数人「大きな蜘蛛」説もいました。
気になって、後から調べたのですが、確かに二つの説が出てきます。(教科書の解説本は、「大きな雲」だったと思います)
私は、その女の子に今でも感謝しています。あの子がそのことを言ってくれなければ、2つの解釈があるなんて、気が付きませんでしたから。
気になる方は、ぜひ調べてみてください。私は、どちらでも解釈できるように、草野新平はあえて平仮名で書いたのではないかと、考えています。(もちろん、4年生が「蜘蛛」という漢字を習わないのですが、作者の遊び心ではないかと、私は考えています。)
子どもと勉強するのはおもしろいです。